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保険×AIの基本

保険代理店のAI活用募集人・経営者がAIに任せられる仕事、任せない仕事

AIを使ったほうがいいのは、分かっている。でも、自分の仕事の何に使えばいいのかが分からない。

そう感じていませんか? 調べてみても、出てくるのは保険会社の大きな取り組みや、AIの道具の紹介ばかり。募集人の1日の仕事に置きかえた話は、なかなか見つかりませんよね。

先にお断りしておくと、私は募集人ではありません。ただ、この業界に25年以上いて、いまも毎日のように募集人の方と話をしています。そして2026年の春からは、非エンジニアのままAIエージェントを使い、自社のWebサイトや社内の管理システムを作ってきました。この記事では、保険の仕事の流れに沿って、AIに任せやすい仕事と、任せない仕事を分けてお話しします。

この記事の結論

  1. AIに任せやすいのは「整理と下書き」です。面談の準備、面談後の記録、フォローの連絡文、月ごとの振り返りなどです。
  2. 任せないのは「判断と約束」です。お客様の意向の理解、商品の比較やおすすめ、告知や引受の判断は、人が行います。
  3. AIの使い方には5つの段階があります。チャットのAIで届くのは2段目まで。3段目から先は、AIエージェントの出番です。
  4. 代理店の経営者は、使い始める前に「入れない情報」「使う場所」「お客様に出す前の確認」の3つを決めておきます。
  5. 最初の一歩は、毎週くり返す仕事を1つ選び、架空のデータで1か月試すことです。

保険代理店のAI活用は「整理と下書き」から

結論:保険代理店・保険募集人のAI活用は、「整理と下書き」から始めるのが近道です。面談の前に前回までの話を1枚にまとめる。面談のメモから、次の行動とお礼の文面の下書きを作る。既契約者に連絡する順番を出す。月ごとの活動を振り返る。どれも、材料が自分の手元にあり、できあがりを自分で確かめられる仕事です。反対に、どの保険をすすめるか、お客様に何を約束するかといった判断は、AIに任せません。この線を先に引いておくと、安心して使い始められます。

保険の仕事は、お客様と向き合う時間と、その前後の事務の時間でできています。そして、AIが力を出すのは、ほとんどが「前後の事務」のほうです。

たとえば、1日に面談が3件あった日の夜を思い出してください。メモを見返し、次回までの宿題を書き出し、お礼の連絡を送る。3件目のころには、どのお客様が何を話していたか、記憶が混ざり始めていませんか?

こうした仕事は、毎回の形がほぼ決まっています。だからこそ、AIに任せやすいのです。

面談の前と後の事務を、AIが手伝う

  1. 面談の前

    前回の話・宿題・今回確かめることを、1枚にまとめる

    AIが手伝う
  2. 面談

    お客様の話を聞き、意向を確かめ、説明する

    人が向き合う
  3. 面談のあと

    決まったこと・次の行動・お礼の文面の下書きを作る

    AIが手伝う
お客様の前に立つ時間は、そのまま。AIに任せるのは、その前と後の事務です。

仕事の流れで見る、AIに任せやすい仕事

結論:保険募集人の仕事を流れで並べると、AIに任せやすいのは7か所です。集客の文面、面談の準備、面談後の記録、提案資料の構成、手続きの進み具合の一覧、契約後のフォロー、そして振り返りです。どれも、AIが整理や下書きをして、人が確かめてから使う形になります。お客様の前に立つ時間はそのままに、前後の事務の時間を短くする。これが、保険の仕事でのAI活用の中心です。

当社では、保険募集人の仕事を20の工程に分けて整理し、AIと人の分担を考えてきました。次の図は、その中から、手間がかかりやすい所を抜き出したものです。

保険の仕事の流れと、AIに任せやすいこと

  1. 1

    集客・情報発信

    AI配信やSNSの文面の下書き、テーマの候補出し

    人出す内容と、所属先の審査を通すか

  2. 2

    面談の準備

    AI前回の話・宿題・今回確かめることを、1枚にまとめる

    人当日、何を話すか

  3. 3

    面談のあと

    AIメモから、決まったこと・次の行動・お礼の文面の下書きを作る

    人記録の中身が正しいか

  4. 4

    提案資料

    AIお客様の課題から、説明の順番と図の案を作る

    人どの商品を、どんな理由ですすめるか

  5. 5

    申込から契約まで

    AI申込ごとの進み具合と、回答待ちの一覧を作る

    人保険会社への確認と、お客様への連絡

  6. 6

    契約後のフォロー

    AI更新月や前回の連絡日から、連絡する順番と文面の下書きを出す

    人連絡するか、何を伝えるか

  7. 7

    振り返り

    AI1か月の活動の記録から、数の動きをまとめる

    人次の月に何を変えるか

AI は整理や下書きを任せること、人 は自分で決めることです。

どの段にも、人 が決めることが残っています。AIに任せるのは、決めるための材料をそろえるところまでです。

募集人なら:まずは「面談のあと」

募集人の方に、私がいちばんおすすめしているのは、面談のあとの整理です。理由は3つあります。

  1. 毎週ある仕事なので、1か月で何度も試せる
  2. 材料は、自分のメモだけで足りる
  3. できあがりが正しいかを、自分で確かめられる

メモを渡すと、AIは「決まったこと」「次回確かめること」「次の行動」「お礼の文面の下書き」に分けてくれます。お客様の情報をどう扱うかを含めた手順は、商談の議事録をAIでまとめる方法にまとめました。

代理店の経営者なら:数字と資料のたたき台

経営者の仕事にも、毎月くり返す作業はたくさんあります。経営計画のたたき台、所属募集人の活動の振り返り、朝礼や勉強会の資料、社内の手順の点検表。どれも、自社の前提を毎回説明し直すところから始まりがちな仕事です。具体的な例は、Claude Codeで作れる道具の例で紹介しています。

ひとつ気をつけたいのは、社員の活動の記録も、社員の個人情報だということです。試すときは架空のデータで行い、本番でどう扱うかは、代理店のルールとして決めてから使います。

AIに任せない仕事

結論:AIに任せないのは「判断と約束」です。お客様の意向を理解すること、どの商品をすすめるかを決めること、お客様に説明すること。そして、告知や同意、保険会社の引受といった正式な手続きも、AIの出力で代わりにはできません。AIが作ったものは、どれだけよくできていても下書きです。中身を確かめ、責任を持つのは、募集人や代理店です。

AIに任せる:整理と下書き

  • 前回の話を1枚にまとめる
  • メモから、次の行動を書き出す
  • お礼や連絡の文面の下書き
  • 活動の数をまとめる

人が行う:判断と約束

  • お客様の意向を理解する
  • どの商品を、なぜすすめるか決める
  • お客様に説明する
  • 告知・同意・署名などの手続き
AIが作ったものは、どれだけよくできていても下書きです。中身に責任を持つのは人です。

具体的には、次のような使い方はしません。

  • お客様の意向を、AIに決めつけさせる:何を大切にしているかは、対話の中で確かめます
  • 商品の比較やおすすめを、AIに決めさせる:選ぶ理由は、お客様の意向と商品の中身です
  • 返戻率や受取額をAIに計算させて、そのまま資料に使う:数字は、保険会社の資料で確かめます
  • 告知・同意・署名、引受の判断を、AIの出力で代える:正式な手続きは、決められた人と手順で行います
  • 所属先の承認が要る資料を、承認なしで出す:AIで作った文面も、審査・承認の手続きは同じです

「AIがこう言った」は、理由になりません

お客様に説明するとき、判断の理由はあくまで、お客様の意向と商品の中身です。AIの答えは、考えるための材料の1つにとどめます。くわしくは生成AIを使うときの注意点をご覧ください。

AI活用の5つの段階

結論:AIの使い方には、5つの段階があります。「質問する」「作業を頼む」「一緒に進める」「仕事を理解させる」「道具を一緒に作る」です。チャットで使うAI(ChatGPTなど)で届くのは、おおむね2段目までです。3段目から先は、「AIエージェント」(Claude Code・Codexなど)を使います。自分のパソコンのファイルを読み書きして、作業まで進めるAIです。毎週くり返す仕事ほど、3段目より先に進む価値があります。

AI活用の5つの段階

  1. 1質問する制度のあらましを聞くチャットでもできる
  2. 2作業を頼むお礼の文面を整えてもらうチャットでもできる
  3. 3一緒に進める1週間分の面談メモから、宿題の一覧を作ってもらうAIエージェント
  4. 4仕事を理解させる「お名前は書かない」などの、自分のきまりを覚えさせる大きな違いAIエージェント
  5. 5道具を一緒に作るメモを入れると、次の行動が出る道具AIエージェント
チャットのAIで届くのは2段目まで。3段目から先は、ファイルを読み書きして作業まで進める、AIエージェントの出番です。

大きな違いが出るのは、4段目です。チャットのAIは、会話が変わるたびに、自分の仕事のことを説明し直す必要があります。AIエージェントは、フォルダの中に置いた指示書のファイルを読んでから作業を始めます。仕事のきまりを、一度書いて渡しておけるのです。

新しく入ったアシスタントを思い浮かべてください。最初の週から何でも任せる人はいませんよね。まず1つの仕事を見せて、やり方を覚えてもらい、任せる範囲を少しずつ広げていく。AIエージェントとの付き合い方も、これとよく似ています。チャットのAIとの違いは、ChatGPTとClaude Codeの違いでくわしくお話ししています。

代理店の経営者が先に決めておく3つのこと

結論:保険代理店でAIを使い始める前に、経営者が決めておきたいことは3つです。1つ目は、AIに入れない情報。2つ目は、どのアカウントとパソコンで使うか。3つ目は、AIで作った文面や資料を、お客様に出す前に誰が確かめるか。この3つが決まっていないと、まじめな募集人ほど使うのをためらい、気にしない人だけが自己流で使う、という状態になりがちです。

  • 1. 入れない情報

    お客様の氏名・生年月日・住所・証券番号、健康状態や告知の内容、保険会社の社外秘の資料、パスワードなど

  • 2. 使う場所

    個人の契約か、代理店の契約(Team・Enterpriseなど)か。どのパソコンの、どのフォルダで使うか

  • 3. 出す前の確認

    お客様の目に触れる文面や資料を、所属する保険会社の審査・承認の手続きに通すか

そして、所属する保険会社の規程が、いつも先です。代理店のAI利用ルールに入れておきたい項目は、生成AIを使うときの注意点に7つにまとめました。

最初の一歩:1つの仕事を1か月

結論:最初の一歩は、毎週くり返している仕事を1つだけ選び、架空のデータで1か月試すことです。選ぶ条件は3つ。毎週くり返していること、材料を架空のデータで再現できること、できあがりを自分で確かめられることです。迷ったら「面談のあとの整理」がおすすめです。いきなり代理店全体の仕組みを変えようとせず、1人・1つの仕事から始めると、つまずきにくくなります。

最初の1つを選ぶ、3つの条件

  • 毎週くり返している

    1か月で、何度も試せる

  • 架空のデータで試せる

    お客様の情報を使わずに練習できる

  • 自分で確かめられる

    できあがりが正しいかを、自分の目で見られる

迷ったら「面談のあとの整理」。3つの条件が、すべてそろっています。
  1. 1

    くり返している仕事を書き出す

    1週間の予定を見ながら

  2. 2

    「月に何分 × 何回」かを書く

    どの仕事に手間がかかっているかが見える

  3. 3

    3つの条件に合う仕事を、1つ選ぶ

    迷ったら、面談のあとの整理

  4. 4

    架空のデータで、AIに頼んでみる

    架空のお客様と、架空のメモを用意する

  5. 5

    1か月たったら、見返す

    「月に何分 × 何回」が、どう変わったか

仕事を選ぶところから、チャットのAIに手伝ってもらってもかまいません。

チャットのAIに、仕事選びを手伝ってもらう頼み方の例

わたしは保険募集人です。毎週くり返している仕事を、次に書き出しました。
(ここに、仕事の名前と「月に何分 × 何回」を書く)
次の3つの条件に合うものを選ぶのを、手伝ってください。決めるのはわたしなので、理由をつけて、候補を2つまで挙げてください。
・毎週くり返している
・材料を、架空のデータで再現できる
・できあがりを、自分で確かめられる

お客様の名前や情報は書かずに、仕事の名前だけで頼みます。

AIエージェントを使ってみたい方は、Claude Codeの始め方で、最初の1時間でやることをまとめています。面談のあとの整理も、既契約者へのフォローも、AIエージェントで解決できます。その最初の1つを、架空のデータで試すところから始めてみてください。

保険募集人向けAI講座では、この「最初に任せる仕事」を、無料オンライン相談の段階から一緒に探します。

よくある質問

小さな代理店や、ひとりの募集人でもAIを活用できますか?

できます。代理店全体の仕組みを変える必要はありません。毎週くり返している仕事を1つ選び、架空のデータで試すところから始められます。最初の一歩は、1人・1つの仕事からです。

お客様の情報を、AIに入れてもいいですか?

まず所属先のルールを確かめてください。ルールが見当たらないときは、入れない前提で使います。お名前などを〔お客様〕のような記号に置き換えてから渡す方法もありますが、病気やお金の話は記号になりません。送る文は、毎回自分で読んでから頼みます。

AIに、保険の提案書や商品の比較を作らせてもいいですか?

商品の比較やおすすめを、AIに決めさせることはおすすめしません。どの商品を、どんな理由ですすめるかは、お客様の意向と商品の中身にもとづいて、募集人が決めることです。AIに頼むのは、説明の順番や図の案などの下書きまでにします。数字は、保険会社の資料で確かめます。

※この記事は、2026年10月時点の情報をもとにしています。AIの使い方は、所属する保険会社・代理店の規程に従ってください。本記事は法的な助言ではありません。